―私たちが2年かけて共に開発をした特殊素材はウール特有のデメリットを一掃してくれました。
繊維開発をするにあたって糸が非常に大事だということが分かりました。どの糸、そして原料を使うかということが出発点です。他社は真似しようとしてもできないと思います。同じ糸をつくれば、同じ商社をつかえば、真似できると思う人が多いですが、製品にすると全く違ってきます。原料の産地まで考えないとだめなんです。油分の違い、土の成分によって出来上がる糸の質が違いますし、同じ種でも土地や紡績機で大きく変わってきます。そこまで一つ一つを丁寧に考えないと開発は難しいですし、そこまで遡らないと本当のものづくりはできないと考えています。
―いろんな異素材に取り組まれるというのは大変ですね。ブレンドも難しいですよね。
ウール×ポリエステルのピリング(毛玉)って本当に厄介なんです。
「鎌倉シャツのお客様はこういうところにこだわる」という情報を基に、デメリットをクリアに出来るよう何度も改善し、完成しました。
なにしろ素肌で着られるものを、飽きずにリピートしたくなるものを、というこだわりをもって開発を続けました。
―鎌倉シャツのことは知っていましたか?
前から気になっていました。私の周りには、鎌倉シャツの貞末会長と同じVANヂャケット出身の人が多く、私自身も取引をしていました。VANのトレーナーなどにも使われた私たちの編み機、通称:小野式フライスで編まれた製品は取引先からの評判がとても良かったです。フライスといえば小野メリヤス、と新聞にも載りました。
鎌倉シャツは他で買うと高価なものを企業努力で手に届く価格で販売しているという印象です。あんなに細い糸を使用した製品が、こんな値段で!それは欲しがる方がいるでしょう。
百貨店の売上が軒並み落ちる中で、どのような会社が生き残っていくのかを日々見ています。
―ものづくりをする上でどのようなことからインスパイアを受けているのですか?
良いものを生み出すには芸術性が大事だと思っています。どれだけ美術館で良いものを見てきたか。どれだけ自分がいいものと接し、アイディアをつかむ感性を磨いてきたかということが大きく影響すると思っています。不思議なことにパリに行くと色々なアイディアが湧いてくるので寝る間も惜しんで書き留めています。
また、いつまでも人からものを習う姿勢が大事だと考えています。
―最後にメッセージをお願いします。
メッセージなんておこがましいですが。これからも世の中にも、自分にも嘘をつかず、人を裏切らず、正直なものづくりをしていきます。そして企業として佐原に貢献をしていこうと思います。
私たちのことを知ってください。