鎌倉シャツの“シャツ”

現在、日本国内で縫製された衣料品は、流通全体のわずか1.5%以下と言われています。そのような状況の中、鎌倉シャツは創業以来、一貫して国内生産にこだわり続けてきました。
私たちは、縫製だけでなく、素材の選定・糸づくり・生地の開発といった、ものづくりの根本的な工程から国内の優れたメーカーと連携し、唯一無二のシャツを追求しています。
こうした考えの先にあるのは、安心して長く愛用いただけるシャツを届けること。
それこそが、私たちが考える“MADE IN JAPAN”です。

日本のものづくり

国内生産の大きな強みは、「お客様と直結できている」ということ。
次の工程を担う工場や、最終的に商品を手に取ってくださるお客様の声を、私たち自身が直接聞き、すぐに対応できる。 それが、国内でつくることの大きな価値だと感じています。

そして何より、「日本のものづくりが好きだ」という同じ思いを持つ人たちと共に、ひとつの製品をつくりあげていけること。 そのよろこびもまた、私たちが国内生産にこだわる理由のひとつです。

素 材 Material

最高品質のシャツは、素材からはじまる

素材の善し悪しは、製品の価値を大きく左右します。
シンプルで洗練されたシャツをつくるには、極上の素材が不可欠です。だからこそ、私たちは素材選びに最大限の労力とコストをかけています。

世界中の産地に自ら足を運び、生産者の熱意に触れ、土地の空気を感じ取ったうえで、納得のいく素材だけを仕入れています。
そして優れた素材は、縫製職人の技術をさらに高めるとも言われています。つまり、素材選びは職人たちへの敬意の現れでもあります。

現在、鎌倉シャツでは、地方の休耕田を活用した国産綿の栽培にも取り組んでいます。“つくる”という営みの最も根源的な部分から関わり、次世代につながるものづくりを目指しています。

Thread

その一本に、命を懸ける

バラバラだった繊維が、撚りを重ねて一本の糸になっていく。
その変化を生み出す工程が、「紡績」です。

鎌倉シャツでは、世界各国から厳選した原料を使用し、高品質な糸を紡いでいます。私たちのドレスシャツに使われるのは、基本的に80番手双糸以上の極細糸。最も高番手では、400番手という超極細糸を用いた製品も展開しています。
糸は細くなるほど、繊維を均一に撚り上げるのが難しくなり、高度な紡績技術が求められます。さらに「綿」の場合は、不純物を取り除く工程も加わるため、非常に精度の高い管理が必要です。

そうした厳しい基準をクリアした糸だけが、私たちのシャツに使われています。
普段は目にすることのない工程かもしれませんが、毎日の心地よさを陰で支えているのは、こうした紡績の技術なのです。

生 地 Fabric

対話を重ね、理想に近づける

原糸を入荷した後、生地を染めたり、加工場に仕上げを依頼したりしながら、完成するシャツの理想の雰囲気に近づけていきます。

鎌倉シャツでは、使用する生地について、染色・織布・加工・仕上げに至るまで、国内の専門工場と密に連携しながら生産しています。
生地は、シャツの見た目や風合いに直結する、重要な要素のひとつです。だからこそ私たちは、「お客様に喜んでいただけるかどうか」という視点を基準に、生地の選定を行っています。

季節に応じた色使い、糸の打ち込み本数、光沢感など。ビジネスシャツとしてふさわしいかを、細部まで厳しく見極めています。

その背景には、糸の状態、織機のわずかな調整、さらには気温や湿度といった環境の影響までも考慮が必要な、繊細な工程があります。 それゆえに、現場では熟練の職人たちが常に目を光らせ、微調整を重ねています。

「今日はどの柄のシャツにしようか」と迷う、その贅沢な時間の裏側には、たくさんの対話と技術の積み重ねがあるのです。

縫 製 Sewing

技術と設計、そのすべてが着心地になる

熟練の職人による縫製技術が、着る人を魅了するシャツをつくり出します。繊細な高級素材を自在に扱いながら、一針一針を丁寧に縫い上げていくその技は、まさに匠の技術そのものです。

さらに、上質なシャツに欠かせないのが、精緻に設計されたパターンです。
鎌倉シャツでは、素材の特性を活かしつつ、縫製を担う職人の技術や工程を熟知したうえで、立体的なシルエットを導き出す緻密なパターンを構築しています。

このパターンを形にできるのは、国内でも限られた工場のみ。
計算されつくした設計と、縫製現場の高い技術力とが融合してはじめて、立体的で美しいシャツが完成するのです。

  • 天然の貝ボタン
  • 生地に適した芯地
  • 運針の細やかさ
  • 巻き伏せ本縫い
  • 裾の三つ巻き
  • 前振りの袖

天然の貝ボタン

高級シャツの証でもある、天然貝ボタン。
私たちのほとんどのシャツには「高瀬貝」を採用しており、ナチュラルな光沢とボタンの掛け外しのしやすさが魅力です。
また、ラグジュアリーラインには真珠の母貝である「白蝶貝」を使用しています。
まるで宝飾品のような輝きがあり、一目みていいものと分かる最高級品です。
細部まで手を抜かない鎌倉シャツのこだわりがボタン一つ一つまで詰まっています。

生地に適した芯地

シャツの顔とも言える襟の表情を決める芯地。
高度な縫製技術を要するフラシ芯を始め、イージーケアシャツに用いられる接着芯(トップヒューズ)もできるだけ自然にみえるように高品質なものを使用。
適材適所で芯地を使い分け、生地の特性を最大限に活かすようにしています。

運針の細やかさ

一般的なシャツは3cm間に~18針が多いのですが、鎌倉シャツでは21針とより細やかに縫製しています。
緻密に縫うことによりドレッシーでシャープな雰囲気になり、耐久性が高くなります。
高度な縫製技術と時間を必要とする、まさに一針入魂のこだわりです。

巻き伏せ本縫い

シャツの裏側の縫い代が全くでない「巻き伏せ本縫い」仕様。同じ個所を2回縫うため手間も2倍掛かります。丈夫で縫い目も美しく、肌当たりの良い、本格仕上げです。

一般的なのは、ロックミシンでの縫い合わせ。シャツの内側に縫い代がでるため、肌当たりが悪く、見た目も美しくありません。安価な量産品に用いられる縫製方法です。

裾の三つ巻き

裾は3重に巻きながら縫い合わせて仕上げます。
カーブしている裾の巻き具合は指先の感覚で行わなければいけないので、高い技術が必要です。

前振りの袖

人体の構造に合わせた、自然と前ふりになる美しい袖カーブ。
体の動きに沿う立体的フォルムのため、可動域が広く、腕を挙げてもシャツの裾がスラックスから出ません。

量産の最高峰

 1993年、バブル崩壊直後の不況の中、鎌倉の小さなビルの2階に「シャツ専門店」が誕生しました。それが鎌倉シャツです。
 まわりからは「なぜこんな場所で?」「シャツだけでやっていけるのか?」と懐疑的な声が多く寄せられました。しかし創業者・貞末良雄は「誰もやっていないからこそ価値がある。繁盛店は立地ではなく、商品とサービスの力で決まる」と信じ、ただひたすらにシャツづくりの技術を磨き続けました。
 鎌倉シャツのシャツには、「本物を、適正価格で届けたい」という信念が貫かれています。その象徴が、通常では考えられない原価率の高さです。多くの企業が敬遠するこの条件下で、鎌倉シャツは利益よりも「驚き」と「喜び」を届けることを選びました。結果として、「ここまでの品質がこの価格で?」と顧客の顎が外れるほどの“驚愕のマーチャンダイジング”が実現したのです。
 その品質とは、見えない部分にまで宿ります。ドレスシャツの糸は、80番手以上の双糸という極細糸を使用。これにより、肌触りはしなやかで光沢に品があり、発色も鮮やか。袖を通すたびに、その上質さを実感できます。
 縫製には「巻き伏せ本縫い」という、本格仕上げを採用。同じ箇所を二度縫うこの方法は、手間も時間もかかりますが、裏側に縫い代が出ないため、肌当たりが良く、着心地が格段に違います。さらに、丈夫で長く着られる、という実用性も兼ね備えています。
ボタンには、天然の「貝ボタン」を使用。高級シャツの証でもあるこのボタンは、ナチュラルな光沢があり、指にかかりやすく掛け外しもスムーズ。毎日の着脱が、ほんの少しだけ特別な所作になります。
 これらすべての工程を、信頼できる日本国内の工場で完結させています。日本の職人技を結集し、「MADE IN JAPAN」で一枚のシャツを仕上げる。それが鎌倉シャツのスタンダードであり、譲れないこだわりです。
たとえ儲からなくても、誰もやらなくても、お客様に喜ばれるシャツをつくる。創業から30余年経った今も、その信念は変わりません。鎌倉シャツのシャツは、ただの衣類ではなく、誠実なクラフトマンシップとお客様への想いが織り込まれた一枚です。
どうぞ安心して、袖を通してみてください。きっと、違いが伝わるはずです。

ディレクター 貞末哲兵

edit:Yuta Murai / photo:Taiki Kuroda / movie:Mizuki Mukae
MEN
WOMEN