鎌倉シャツの甚兵衛
〜新しい服への挑戦は、再び浄智寺から始まった〜
5年前、お寺で働く方々の声をもとに、ドレスシャツの技術を活かした作務衣を開発した鎌倉シャツ。
その経験を経た今、日本の夏にふさわしい新たな日常着『甚兵衛』が誕生しました。
今回はその魅力を、クリエイティブディレクター哲兵とプロダクションディレクター宮澤が、鎌倉・浄智寺で語り合います。
貞末 哲兵
クリエイティブディレクター
1977年生まれ。某セレクトショップ販売員を経て、ミラノのデザイン事務所に勤務後、現職。年1/4をヨーロッパで過ごしていたが、2020年、真の鎌倉シャツを作るため東京から距離を置き、鎌倉に移住した。2025年現在、世界マーケットへの意識を高めると同時に、鎌倉やローカルの大切さを痛感している。
宮澤 直樹
プロダクションディレクター
1972年生まれ。東京下町シャツ工房の3代目として、幼少期よりシャツ作りを学んだ。日本のみならずイタリア、フランス、イギリス、アメリカのシャツ研究心と流行を取り入れるセンス併せ持つ次世代シャツ作りのキーマン。シャツ作りの知識は日本有数。
哲「宮澤さん、今日は久しぶりの浄智寺ですね。」
宮「初めて哲兵さんと浄智寺に来た時もちょうど紫陽花が始まる少し前で、今日みたいに雨が降っていましたね。」
哲「懐かしいですね、ちょうどコロナ禍に突入した5年くらい前でしたかね!雨の浄智寺は、美しい新緑と咲き始めた紫陽花が本当に美しいです。
都心から僅か40分くらいに位置する、ここ北鎌倉の自然や建築物には、日本人が本来持っている美意識を呼び起こさせてくれますね。」
宮「ウチは三代続く江戸のシャツ屋だったんですけど、戦争になる前の日本や東京は本当に美しい文化を持っていたんですよね。
※またかと言われるかもしれないけど、江戸の文化は世界に冠たるものでしたから。」
哲「そうなんですよね。江戸時代の東京は世界最大の人口を誇る100万都市であり、世界屈指の進んだ文明を持っていて、衛生面でも他に類を見ないくらい素晴らしかったみたいですからね!
私達は、今こうして洋服(私はこの時、作務衣でしたが・笑)を着ていますが、あくまで日本人は和服を着用してきた歴史だったので、未だにどこかに違和感があったりして、着こなしに慣れていないのが正直なところです。」
宮「そこで鎌倉シャツは、世界のビジネス・シーンにおける着こなしの重要性を説いてきているのですが、まだまだ道半ばですよね。」
哲「はい。日本には幸いにも戦後にVANが出来て、ある程度西洋の服装を文化として捉える知的で偉大な先人達によって、なんとかここまで来れたと思うのですが、今日においてはその影響もだんだん薄れてしまったように感じています。」
※宮澤が得意とする江戸自慢
宮「鎌倉シャツはVANの後継者、正当なボタンダウン・シャツを売る会社と言われていますが、まだまだ頑張らないといけません。」
哲「宮澤さんには、ウチの※大道や※日坂も鍛えながら、更なる物作りの進化とアップグレードをお願いしたいと思います。
さて、今回は鎌倉シャツに「甚兵衛」という新しい服が誕生したわけですが、製作の依頼を受けた時はどんな印象を受けましたか?」
宮「正直そこまで驚きはしませんでした。5年前、哲兵さんに※作務衣を作ってくれと言われた時に比べればね。(笑)
なるほど。と思ったというか、作務衣よりも街着として定着している甚兵衛の再解釈とアップグレードは直感的に面白いと思いました。」
※大道は鎌倉シャツのディレクター
※日坂はアメリカントラッドのディレクター
哲「そうなんですよね。街着として定着していて、多くの百貨店やセレクト・ショップでもラインナップしている現状を考えると、作務衣よりはハードルが低いかもしれませんね。
ただ、私自身は甚兵衛に興味があってもどこで買って良いか分からないのが正直なところでした。」
宮「ネット上には無数の甚兵衛が売られていますが、どれも似たような感じで選ぶのが難しいですよね。」
哲「そこで、鎌倉シャツが作務衣などで培ってきた和の技術で、甚兵衛を作ったら今までにないような素晴らしい品質の物が出来ると考えました。」
宮「哲兵さんらしい発想ですよね。」
哲「私はいつも鎌倉シャツの顧客の一人という認識がありまして、世の中にある物の中から「鎌倉シャツが作ったらどうなるか」に興味があるのです。
宮澤さんが鎌倉シャツのフィルターを通して良い物を作っていく、その過程や、出来上がった製品を見るのが好きなのです。
私がそうだとしたら、他にも共感してくださる顧客の方がいらっしゃるはずだと思っています。」
宮「私は過去に※多くの百貨店やセレクトショップ相手に商売をしていたのですが、その顧客共感型の発想は意外と他の人は持っていません。
ですから、鎌倉シャツに来てそろそろ十年になるのですが、今も仕事をしていてとても楽しいのです。
一般の多くのバイヤーや企画の方が、過去の実績や数値、いかに売るかの話が多いのは仕方ないと思ってはいますが、、、。」
※宮澤は前職で、大手百貨店やセレクトショップにシャツを作って納めていた
哲「商売は、「自分の考えや哲学における賛同者を増やすこと」だって※会長がいつも言っていましたよね。」
宮「言ってました!私が会長と話をしていた中でも印象に残っていることの一つです。」
哲「もちろん、ボランティアでもなく、趣味でもないので、売り上げのことは考えなくてはなりません。
でも、逆に考えると、「売り上げのことを考えただけの商品に賛同してくださる方は少ない」のではないかと思っています。」
宮「なるほど、結果売れない。みたいな感じですよね。」
哲「私は売り上げのことは考えていますが、商品を出す時は必ず賛同してくださる方がいらっしゃるはずだと、自分の直感を信じています。」
宮「最近、哲兵さんがよく言う「直感を大切」にするのはとても良いことだと私も思っています。
私自身は、服を理詰めで攻略して、さらには工場さんにその意図を伝えることがメインの仕事ですが、そんなことは一切語らずに、お客様に「なんか良いよね!」と言ってもらえることが、実は一番嬉しいことなのです。」
哲「なんか良いよね!それこそお客様が服を選ぶ時の直感から出る言葉ですよね!」
※鎌倉シャツの創業者 貞末良雄
哲「さて、前置きがかなり長くなってしまいましたが、今回の甚兵衛作りにおけるこだわりのポイントを教えてください。」
宮「最大のポイントは作務衣同様なのですが、シャツ屋が甚兵衛を作ることによって、どことなく漂う「洋服の雰囲気」です。」
哲「なるほど、理屈ではなく、洋服の雰囲気を持っている甚兵衛ということですね。」
宮「哲兵さんが、作務衣作りをする中で、お寺の方々と話している時にもよく言われた「なんか洋服の雰囲気がある」ですね。」
哲「よく、宮澤さんは作り手によって物の表情が変わると言っていますが、正に作り手がシャツ屋だからこその甚兵衛ということになりますね。」
宮「その通りです。甚兵衛のディティールに関しては、商品ページに譲りますが、シャツ屋の素材、シャツ屋の設計図、そして、シャツ屋の縫製による甚兵衛ということです。」
哲「細かい説明を受けるより遥かに分かりやすいですね!私もこの夏は甚兵衛を着て、鎌倉や京都の街並みを歩いてみたいと思います!」
宮「夏の日本に映えそうですね。着ていて涼しい(鎌倉)シャツ屋の甚兵衛の完成です。是非、顧客の皆様もお手に取っていただけたら幸いです。」
哲「今から販売がとても楽しみですね!まだまだ他にも聞いてみたいこともあるのですが、そろそろ時間のようです。 宮澤さん、本日はありがとうございました。シャツの方も開発が進んでいるそうで、本業の方も楽しみにしています!」
宮「こちらこそ、ありがとうございました。最近シャツ以外も燃えているのですが、是非シャツの方もご期待ください。」
哲「それでは、またどこかでお会い出来ることを楽しみにしています。」
私たちのことを知ってください。