佐野:今回はMANHATTANモデルの「クラシックフィット」の改変です。
宮澤:クラシックフィットとはその名の通り、クラシックなシャツです。つまり、時代が動いても、スタイルの流行り廃りがあっても変わらないシャツですよね。
貞末:創業期は、クラシックフィットのみ。スリムフィットはありませんでした。その時代から、現在までに至るまで、クラシックフィットは細かいマイナーチェンジを続けてきました。原型という、基本的なシャツ作りの原点として、非常に大切なモデルです。
佐野:現在のマーケットは、東京やイタリアも、主にスリムフィットがフィーチャーされていて、その反対のモデルは“ただゆったりしているというイメージ”がありますよね。
宮澤:確かに、クラシックフィットの本来の意味は、世界中で忘れられてしまっている気がします。クラシックとスリムの棲み分けは、サイズがレギュラーだからクラシック、細身だからスリム、ということではなくて、スタイルの違いなんですよ。
貞末:クラシックのリバティはまさにシャツの原点であるイギリス的なもので、マディソンは本来の古き良きアメリカの持つアイビー的な要素をそれぞれ現代的に解釈したもの。それに合わせるネクタイもロンドン的なものや、レジメンタルなどで、スタイルとして楽しんでもらいたいね。
宮澤:僕としては、クラシックフィットの持つ魅力を際立たせながら、スリムフィットとの違いを明確にすることを意識しました。お客様がお店にいらした時に、スリム、クラシック両方の棚からシャツを自由に選んでいただけるようなそんなクラシックフィットであり、スリムフィットにしたかったのです。スリムフィットはイタリアを軸としたスタイリッシュなシャツですし、クラシックフィットはイギリス的な要素やアメリカ的な良さを感じていただけるようなスタイルの確立です。
佐野:ただ白いシャツを着るということや、ボタンダウンを漠然と着るのではなく、スタイルの違いをコーディネートの細部にまで反映させて、楽しんでいただきたいですよね。今日はクラシックのボタンダウンを着て、ブレザー、ローファーで行こう!みたいな。
貞末:私たちは、NYにお店があり、アメリカ全土の方々の情報を、リアルな体験から得ることができるし、NYというトラディショナルの聖地で、日々の体験、体感を大事にしながら、シャツ作りに活かせる。それでも、日本で我々が培ってきたDNAを含んだ“鎌倉シャツのスタイル”は、ぶれてはならない。“進化する改変”から始まったプロジェクトはクラシックフィットについては、『BACK TO BASICS』でもあるわけだな。
宮澤:そこで、再度世界中のシャツをオフィスに集め、議論と方針を決めていきながら、それを愚直に、何度もパターンを作り、現場で縫い直し、また議論を重ねることの繰り返しでした。「マンハッタン スリムフィット」とは全く違う技法、パターン理論でクラシックを追及していきました。
佐野:クラシックフィットは、寸法上はスリムよりゆとりがあるサイズ感のため、後ろ身頃を小さくするようなパターンは必要なく、袖幅にしても細くする必要はないので、緩やかでエレガントな袖山でいいですしね。
宮澤:そうなんです。「クラシックフィット」は後ろ身頃を大きくして、脇線を前に移動して、そこから袖をつければバランスの良い袖になってくるわけです。襟については、クラシックな見栄えになるように、あまりカーブを描くパターンは必要なく、少し直線的なパターンにすることで、クラシックな美しい雰囲気になってきます。
佐野:ボタンダウン襟のロールについては、スリムフィットで培った理論や技法を取り入れることで、現代のクラシックを再構築することができましたよね。
宮澤:シャツの縫い代は“トラディショナルで質実剛健な雰囲気”を出すために、しっかりと取りました。
佐野:縫い代はパーツの内部に隠れてしまうので、一見関係ないように思いますが、シャツの雰囲気を決める上で非常に大切だと思いました。スリムでは、縫い代を少なくすることで、すっきりとした雰囲気になっていますからね。
宮澤:その他のディテールもクラシックなテイストを保ちながら、唯一、背ヨークの幅だけは、アイビーリーガーをイメージして、細く仕上げました。前立ても“表前立て主体”で寸法を維持しました。
佐野:剣ボロに関しても丈夫な2本ステッチを残しているので、雰囲気がありますよね。質実剛健なムードがここからも感じられます。
貞末:細部にこだわりながら、シャツの原点を追求した新しい「マンハッタン クラシックフィット」が完成しました。今、最もマーケットで新しいクラシックであり、エレガントなモデルです。皆様、是非一度袖を通してください。
私たちのことを知ってください。